春恋10

10


 朝練を終え、顔を出し始めた眠気を振り払いながら、グラウンドの正門前の坂道を下る。下りきれば、いつもよりも少し早い時間帯だというのに、同じ制服に身を包む生徒の姿が少なくないことに気がついた。その中に、ちゃんの姿がないと知りつつも反射的に探してしまう。
 案の定、ちゃんの姿どころか、彼女がいつも一緒にいる女子の姿すら見つからない。予想していたとはいえ自然と溜息はこぼれる。だが、今ここにいないということは、今頃、ちゃんはブラスバンド部の朝練に勤しんでいるんだろう。
 頑張っているんだな、という想像ひとつで胸の奥が熱くなる。自然と力が入るままに肩にかけた通学バッグの持ち手をぎゅっと握りしめた。
 江崎や杉と連れだって学校へと向かう途中、コンビニに立ち寄ると足を止めたふたりに見送られ、俺はひとり学校への道を急ぐ。
 ――席も隣だし、早く学校に行けば、その分、ちゃんと話が出来るかもしれない。
 そんな思惑に背中を押されれば自然と歩くスピードが上がった。グラウンドを横目にしたままぐるりと角を大きく曲がれば、あとは前方に見える校舎へまっすぐ向かうだけだ。
 おおきくひとつ息を吸い、そのまま強く吐き出す。今度は落胆ではなく、意気込みを含んだものになった。
 自然と眉根に力が入ったのは、ちゃんのことだけではなく、今朝方知らされた遠征の話が頭にあったからだ。
 ゴールデンウィークに行われる遠征中、普段ではなかなか対戦できない強豪校との試合が含まれると監督は言っていた。対戦校として挙げられた学校名は、テレビで見聞きしたことのあるものばかりで俺だけではなく、一年生のほとんどがいろめきだったものだ。
 だけど、締めくくりに添えられた監督の〝関東大会を前に一年の実力を試す〟という言葉に、誰もが瞳の色を変えた。真剣な眼差しの迫る緊張感は思い出しただけでも腹の底が震えるほどだ。
 ベンチ入りしていない2・3年の先輩を差し置いて出しゃばるのは気が引ける。だが、だからと言って、遠慮して手を抜くのは失礼過ぎる。
 春季大会はスタンドで見守ることしか出来なかったが、関東大会では出場のチャンスがあるかもしれない。そんなことを言われて燃えないやつは、そもそも稲実にいる資格はない。
 ――俺だって、稲実に入ったからには自分の力を十分に試したい。どこまで通用するのか、その先を見てみたい。
 チラつかされた未来の可能性を前に、欲が全面的に押し出される。栄光を掴むために、まず自分が何をするべきか。今までだって真剣にやってこなかったわけではないが、さらに力をつけないと。
 野球に気持ちが傾くにつれ自然と顔つきも強ばっていたのか、周囲を歩いていたひとたちの困惑混じりの視線がこちらへと向けられていることに気がついた。ぐいっと手の甲で頬を拭い、詰めていた息を吐く。たったそれだけで表情を取り繕えるわけではなかったが、肩に入っていた力を抜くことには成功した。
 もうひとつ大きく息を吐きだし、よし、と拳を握る。見えてきた校舎、その正門をくぐり、逸る気持ちを胸に昇降口へと駆け込んだ。
 ――とりあえず、まずは授業を頑張らないと。中間テストで赤点なんか取ってしまったら部活どころじゃないもんな。
 いざとなったらは教えてくれるだろうか。学年一の秀才だと言う友のさらりとした笑顔が頭にチラついたが、その笑みがニタリと崩れれば頭を横に振るうことしかできない。を頼るリスクはデカい。頼んだこともないのに一瞬でそうだと判断したのは、きっと間違いじゃないだろう。
 昇降口の手前で爪先をコンクリートで叩き、革靴の砂を気持ちだけではあるが落としていると、階段の方から女子が駆けてくる姿が横目に入る。

「あれ? ちゃん?」

 まっすぐに走ってきた彼女はすぐさま横に逸れたためほとんど顔は見えなかったが、姿かたちがちゃんであることを主張した。見間違えるはずがないと確信しながら彼女の後を追う。もし本当にちゃんなら一緒に教室まで上がれたら――。そんな気持ちを抱え、彼女へと近づいた。
 離れた距離を詰め彼女の姿を目にすれば、想像したとおり駆けてきた少女はちゃんで間違いなかった。だが、ちゃんの見慣れない様子に、あげかけた声と手のひらをそのまま引っ込めてしまう。
 壁を背に、昇降口の出入り口から周囲を伺い、そっとガラス越しに外を覗き込む。スパイ活動や尾行を思わせるちゃんの仕草を前に、俺は顎に手を添え首を捻ることしかできない。
 じっと外の様子を窺うちゃんを黙って見つめ続けながら、彼女の行動の意図を探る。
 もう楽器を持ってないってことは部活の朝練は終わったんだろう。だったら教室へと向かえばいいはずなのに、どうしてこんなところまで降りてきたのか。しかもこんな風に相手からは見えないように隠れるなんてなにか意図があってのこととしか思えない。
 ――まさか、警ドロ?
 ピン、と脳裏に閃いた考えに目を見開く。だが、まさか高校生にもなって朝から鬼ごっこなんてちゃんがするわけがない。頭を横に振って浮き上がったばかりの考えを払い落とし、「じゃあ、どうして」と改めて考えると、ぼんやりとまたひとつ違う考えが頭に思い浮かんだ。
 ――誰か、待っているんだろうか。
 待ち伏せをしているとしか思えない姿を目にすれば、そう考えるのが一番自然だと思えた。
 ちゃんが誰かを待っているのだとして、一体相手は誰なのか。こんな風に隠れて探す相手は、ちゃんにとってどんなひとなのか。
 考えればきりが無い上に、気持ちの悪い詮索だと自分でもわかっている。だけど、他ならぬちゃんが関わっているのだと思うとどうしても無視することが出来ない。
 懊悩する頭の中に、候補のひとつとして〝見られたくない相手〟という考えが頭を過る。もしくは〝待っていることを誰にも知られたくない相手〟か。
 どちらにせよ、今回は黙って引き下がるのが賢明だと思える候補だった。だが、空気を読むべきだと思いつつも、どうしても引っ込むという選択肢がとりがたい。
 気になるのであれば、気付いたことを全部無視して突き進むしかない。開き直りにも近い考えに後押しされるように、きゅっと唇を結び、意を決してちゃんへと近づいた。

ちゃん?」
「わっ! い、樹くん?!」

 ――あ、やっぱり声掛けちゃまずいやつだったかな。
 慌てふためくちゃんを前にそんな懸念が頭に浮かぶ。だが、気持ちを立て直したらしいちゃんがいつものように笑って「おはよー」と口にしたことで話しかけてもよかったのだと胸をなで下ろす。
 そっと吐き出した安堵は、ちゃんに拒絶されなかった安心か、それとも関心が自分に向かったことへのものなのか。自分でも判断のつかない心の緩みを抱えたまま、横髪を耳にかけながらこちらをまっすぐに見上げるちゃんの正面へと足を運ぶ。

「おはよ。どうしたの? こんなとこにいるの、珍しいね」
「朝練も終わったから……ちょっと、その、用事を済まそうと――。それより樹くんもお疲れさま。今日はなんだかいつもより早いね」
「あぁ、うん。今日は練習が軽めだったんだ」

 遠征を目前に控えていることもあり、体調管理も練習の内だと今日の朝練はいつもより短く切り上げられた。
 地道にコツコツと練習を重ね、阻む壁を乗り越える力を蓄える。だが、あまりにも根を詰めすぎるといざというときに力を出せない。無理をするべき場面はこの先いくらでもあるからこそ、時には思い切った休息も必要だというのは原田先輩の言葉だ。
 似たような言葉はシニアの監督にも耳にタコができるほどに聞かされた。残っている体力をどう使うか。そのバランスをうまくコントロールできないようでは長くは戦えない。走り続ける体力も必要だが、高く飛ぶためには助走後に深く踏み込むことも必要なのだから。
 恩師の言葉を胸に、ぎゅっと拳を強く握る。またひとつ心の奥に宿った熱に触発され、自然と表情を引き締めていたらしい。目の前に立つちゃんが心配そうに眉根を寄せてこちらを見上げていたことでそれを察知する。朝から顔を顰めてばかりだな、と頬を緩めるべく右手親指の腹で左頬をつねった。

「ごめん。ちょっと部活のこと考えちゃった」
「ううん。――いつだって真剣だもんね、樹くん」

 軽く首を横に振ったちゃんの頬がほんのりと色づいたのを目の当たりにすると、気持ちの強さがまた違うベクトルへと向かった。だが、今はまだ、ちゃんへの真剣な気持ちは自分の中にだけ押しとどめておくべきだ。そう判断し、表情に出そうな想いを頬をつねる力をさらに加えることで無理矢理抑え込んだ。

ちゃんの用事って、まだ終わってないんだよね? やっぱり俺、先に教室に上がった方がいいかな」
「えっと、そうしてくれると……助かる、んだけど」

 言いにくそうに言葉を詰まらせるちゃんに、踏み出しかけた足を縫い止める。口元に手を添え思案するような仕草を見せるちゃんは、そっと俺から視線を外した。ほんの1・2秒。押し黙ったちゃんの視線がこちらへと戻ってくる。
 まっすぐに、俺だけを見つめるちゃんの瞳に映る熱の色に、心臓は簡単に跳ね上がった。
 
「――あのね、樹くん。……今から言うこと、秘密にできる?」
 
 はにかむような表情のちゃんの言葉に、ぐっと喉の奥に力が入る。うん、という代わりに頭を二度、三度と縦に揺らす。俺の動作を見上げたちゃんは口元を緩めて、小さく頷いた。

「おおきな声じゃ言いにくいな……。お願い、樹くん。ちょっとだけしゃがんでくれないかな?」

 言って、周囲を窺うように視線を左右に振ったちゃんが、こちらに手招きしたかと思えばそっと自らの口元に手のひらを添える。その仕草に、どきりと心臓が撥ねた。
 内緒話はいつだって甘い魅力を纏っている。それをちゃんから差し出されるのだと思うと、簡単に心が浮き足立った。
 俺が屈むのを待つちゃんの視線がこそばゆい。軽く体勢を横向きにしながらちゃんの頭の高さと合わせるように膝を曲げた。高さが近づいたことで距離がぐんと近づいたような錯覚を覚える。ちゃんが俺の肩に触れるとなおさらだった。
 内緒話の手のひらはそのままに、ちゃんの頭がこちらへと近づいてくる。

「あのね……」

 耳の中に直接注ぎ込まれるちゃんの声は、小さいのによく響く。腹の奥まで届きそうな心地よさに、ぎゅっと強く目をつぶった。
 体中の神経が、気持ちが、俺のすべてがちゃんへと向かっている。そんな心地さえ覚えるほどに、ちゃんへと集中していた。
 その時――。

「あれ? 樹ー? なにやってんだ、お前」
「わっ! 鳴さん?!」

 背後から聞こえてきた鳴さんの声に、反射的に曲げていた膝を伸ばす。その瞬間、ガチ、と間近で音が鳴り、同時にこめかみに痛みが駆け抜ける。

「いてて……、ってちゃん?!」

 目の奥がチカチカと光る。咄嗟の衝撃を流すことが出来ず、右手の平で自らのこめかみを抑えていると、同じように額を抑えるちゃんの姿が横目に入った。
 眉根を寄せて痛そうな表情を浮かべるちゃんに、サッと血の気が引く。今、降りかかった衝撃は俺とちゃんの間で起こったものだ。と、いうことは、俺の痛むこめかみと、ちゃんの痛がる額がぶつかったということにほかならない。現場検証なんていらない。目に見える事実と走る痛みが何よりの証拠だった。

「大丈夫っ?! っていうかごめんね?!」
「ううん、ちょっとびっくりしたけどもう平気だよ。こっちこそちゃんと避けれなくてごめんね」
「いや、いきなり動いた俺が悪いよ! 痛かったよね? あー、もうホントなに考えなしに動いてんだろ。ホントごめん!」

 鏡なんて見なくても自分が蒼白な顔をしているだろうことがハッキリとわかった。謝り倒すことしかできない自分が歯痒くて仕方が無い。
 恐縮しきりの俺に対し、ちゃんは痛そうな素振りをも隠そうとする。そんなちゃんの額を、彼女の手のひらごしながらも必死に摩る。痛いの痛いの飛んで行け、とまではさすがに口には出さないが、〝痛みが少しでも和らぎますように〟という気持ちだけは強く込めた。
 
「腫れてないかな……ちょっと、見せてもらってもいい?」

 両手で額を押さえるちゃんの手のひらをそっと横にずらし、そのまま額にかかる前髪を指の甲で流す。運良く擦り傷にはなっていないようだが、周囲の肌の色よりもうっすら赤みを帯びているのを目の当たりにすると自然と眉根が寄った。俺がちゃんに傷を負わせてしまったのだと思うとなおさらだった。
 今はほんのりと赤くなっているだけのようだが、もしかしたらあとでコブになってしまうかもしれない。

「冷やした方がいいかもしれないし、一度保健室行こうか」
「ううん。そんなに痛くないから大丈夫だよ。それより樹くんは? 大丈――」
「だからなにやってんだよって聞いてんじゃん。樹。そうやって先輩のこと蔑ろにするのよくないよ?! 社会に出た時、苦労するのはお前なんだか、ら、ね――」

 俺とちゃんの会話なんてお構いなしに、べらべらと文句を並べ立てていた鳴さんの声が中途半端なところで途切れる。どうしたんだろう、と首を捻って背後を窺えば、鳴さんはぎょっと大きく目を見開いて固まっていた。

「え……お前、何朝から盛ってんの……」

 ドン引きしているのだと取り繕うことをしない鳴さんの言葉にサッと血の気が引く。膝を曲げてちゃんの額を覗き込む俺の姿を目に入れた鳴さんのおおいなる誤解に気づき、反射的にちゃんの姿を背に隠した。
 後々、絡まれるのであれば俺だけでいい。とにかく、ちゃんに迷惑をかけてはいけない。その一心での行動だったが、鳴さんの目にはそれ以上の意味を孕んだもののように見えたらしい。

「うっわ……マジか……。お前、そういう……」

 絶句するあまり二の句が継げないのだと、ありありと示す鳴さんは、「ありえねー……」とぼやき続ける。だが、復活すれば先程以上に怒濤の口撃で追求されるはずだ。そんな場所にちゃんを残していてはどんなことを言われるか。部活でいじられる程度ならいくらでも我慢するが、ちゃんまで槍玉に挙げられるというのならと話は別だ。
 ちゃんを逃がすなら、鳴さんが放心している今しかチャンスは残されていない。そう判断した俺は上体を捻り、そっとちゃんに耳打ちする。

「ごめん、ちゃん。この人、絡み始めたらしつこいから先に行って」
「う、うん……。樹くん。また後でね」
 
 頭を揺らしたちゃんがここに来たときと同じように走り去っていく後ろ姿を見送っていると、ぐいっと背後から襟首を引っ張られた。ネクタイと襟元と、ひとまとめに絞まると呼吸が覚束なくなる。反射的に咳き込めば、襲撃の手がほんの少しだけ和らいだ。
 
「ちょっと聞こえてるんだけど! っつーかなに今の! カノジョ?!」
「かッ――! ちっ、違います!」
「え、じゃあお前カノジョでもないコにあんなことしてたの!? あ、ねぇ! 雅さん聞いてよ! 樹のやつ! 今、そこで女子とチューしてたんだけど付き合ってもないのにしたんだって!」 
「……やるじゃねぇか」
「だから! してませんってば!! こんなところでチュ……キ……っとかするわけないでしょ!」

 通りがかっただけの原田先輩にまでなんてことを言うんだこの人は!
 鳴さんの言葉を信じてしまったらしい原田先輩は、心底驚いた表情を浮かべながらも肯定的な言葉を振り絞ってくれた。
 ――だけど違うんです! ちゃんとチューなんてしてないんです!
 そもそもチューもキスもまともに口に出来ないほど童貞丸出しの俺が、こんな公衆の場でちゃんにそんな不埒な真似を仕掛けることができるわけがない。
 そういうのはちゃんと告白して付き合って、3回目のデートあたりの帰り道。まだ離れがたいから、なんて言って立ち寄った公園で夕陽の迫る中。肩を並べてベンチに座り、楽しい会話がふと途切れた瞬間……。気付いたら握り合っていた手のひらにどちらからともなく力が入り、そして、そして――。
 具体的な例を頭に思い浮かべてしまったことで頭から首にかけて真っ赤に染まる。そんな俺を見た鳴さんは心底気持ち悪そうに顔を歪めた。
 だが、一通りの嫌悪が過ぎれば、それは途端に興味に変わったらしい。にやりと楽しげに顔を歪めた鳴さんは、口元に白い歯を綻ばせる。

「やだ、樹ってば初チューだからって浮かれてんだー! あ、今日のこと日記につけるために新しくノートでも買ってあげよっか? 優しい先輩だなぁ、俺!」

 気持ち悪そうにしていたかと思えばからかうネタが増えたとばかりに生き生きとし始めた鳴さんに、今度はこちらがげんなりと顔を顰める番だった。

「してないって言ってるじゃないですか! 本当にいい加減にしてくださいよ、バカじゃないですか!」
「ハァ?! お前、今、先輩に向かってバカっつった?」
「言いますよ! 言いがかりにもほどがありますから! ホントくだらないこと言ってないでさっさと教室に向かったらどうですか!?」

 売り言葉に買い言葉。先輩相手であっても引くに引けないことはある。今がそうだった。
 俺ひとりがなじられる程度ならばいくらでも我慢するが、今回の件はちゃんの名誉に関わる。なんとしても否定して今後、同じ話が蒸し返されないようにしなければならない。
 キッと眉を上げて抵抗の意を示すと、俺の本気が伝わったらしい鳴さんは怯んだようにぐっと言葉を飲み込んだ。だが、だからと言って生まれた怒りをまったくないものにすることはできないようで、その怒りを俺に向けられないと見るやいなや、すぐさま原田先輩にその矛先を向けた。

「ちょっと雅さん! 樹のやつあんなこと言ってるよ?! 今年の新入り生意気なんじゃない? 同じ捕手なのにちゃんと躾てないの?!」
「どこからどう見てもお前が悪い」

 怒濤の勢いで迫る鳴さんの剣幕を、溜息交じりで受け流す原田先輩がチラリとこちらに視線を向け、そっと手の甲で追い払うような仕草を見せる。
 ――これは、今のうちに逃げろと言うことだろうか。
 その真意が頭に思い浮かびながらも、念のため、と自分自身を指で指し示すと原田先輩は無言で頷いた。
 ――ありがとうございます!
 言葉には出せない代わりに深く頭を下げる。鳴さんの視線がこちらに向けられないうちに、と足音を立てないように気を払いながら素早くその場を後にした。




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